09.横顔
キミは気づいているだろうか?
その横顔を見るたびに、泣き出してしまいそうになる僕の気持ちを……
いつだってそうだった。
キミに出逢ってからというもの、僕の記憶に残るキミの顔は、
いつだってつまらなそうなキミの横顔だけ。
その瞳が、まっすぐに僕を捕らえることはない。
そう……ある一時を除いては……
「……神田……ねぇ、神田ってば!」
「…チッ…なんだよ……」
頬杖を付き、つまらなそうにそっぽを向くキミは、
僕の問いかけにいつも煩そうに返事をする。
本当は嫌われているんじゃないかと思っていた。
そう思うと悲しくて、悲しくて、どうしようもなかったけど、
ある日そうじゃないとわかったんだ。
『え?神田がアレンくんを嫌い?
う〜ん、嫌いだったら、一緒の場所には居ないんじゃないかしら?
少なくとも私はそうよ?
ホームにいる時まで無理して嫌いな人と一緒にいたくないもの』
リナリーの台詞。
そう言われればそうだった。
キミは煩わしそうにしながらも、いつだって僕の傍に居てくれる。
食堂で……談話室で……
初めは僕が勝手にキミの姿を目で捉えてるんだと勘違いしてた。
けど、そうじゃなくても、いつの間にか僕の視界にはキミがいる。
これって、キミが故意に僕の傍に居てくれてるって、
勝手に勘違いしてもいいんだよね?
「神田って、本当にいつも無愛想ですよね?」
「……んだとぉ? 好きで無愛想にしてんじゃねぇよ!」
ほら、今キミが怒った顔でこっちを向いた。
不器用な僕らは、互いを否定し合うときしか、
こうして相手の顔を見れないんだ。
だって……そうでもしなきゃ……
思わずその頬に、唇に、手を伸ばしてしまいそうになってしまうから……
だから、僕らは喧嘩する。
互いの顔を見詰め合って、睨め合って、
思う存分喧嘩してやるんだ。
だけどね、時々こうしてキミの横顔を見ていると、
とても寂しくなるんだよ?
どうしてお互い素直に見詰め合えないんだろうって……
それでも……やっぱり僕はキミの事が好きだから。
好きで好きで堪らないから。
今日も……キミの横顔に、裏腹な言葉を紡ぐ。
その瞳が、まっすぐに僕を捉えて離さない様に……
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